自賠責保険 保証項目

自賠責保険の補償項目とその内容について

自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は、交通事故の被害者を救済するための強制保険であり、被害者の人身損害に対して以下の補償が行われます。物損は対象外です。補償の限度額は被害者1名あたりの金額となります。


1. 傷害による補償(限度額:120万円)

交通事故によって負傷した場合に支払われる補償です。

  • 治療費

    • 診察料、入院費、手術費、薬代、通院費(交通費含む)など。
    • 必要かつ妥当な範囲で実費支払い。
  • 文書料

    • 診断書、診療報酬明細書などの発行費用。
  • 休業損害

    • 事故によるケガで仕事を休まざるを得ない場合の補償。
    • 原則として「1日あたり6,100円」、実収入に応じて上限19,000円まで補償。
  • 慰謝料(入通院慰謝料)

    • 精神的苦痛に対する補償。
    • 「通院日数 × 2 × 4,300円」または「治療期間 × 4,300円」の少ない方。

2. 後遺障害による補償(限度額:最高4,000万円)

治療を行っても身体に後遺障害が残った場合に支払われます。

  • 後遺障害慰謝料

    • 等級ごとに定められた補償額(1級:1,100万円、14級:32万円)。
    • 等級は1級(最重度)~14級(最軽度)まである。
  • 逸失利益

    • 後遺障害によって将来的な収入が減少する分の補償。
    • 計算式:基礎収入 × 労働能力喪失率 × ライプニッツ係数

3. 死亡による補償(限度額:最高3,000万円)

交通事故による死亡時に支払われる補償です。

  • 葬儀費用(上限:60万円)

    • 通夜・告別式の費用、墓碑代、僧侶への謝礼など。
  • 死亡慰謝料

    • 遺族への慰謝料として、被害者の家族構成によって異なる。
    • 例:一家の支柱=1,000万円、配偶者・子供=550万円、両親=500万円など。
  • 逸失利益

    • 事故による将来の収入の損失分。
    • 計算式:基礎収入 ×(1-生活費控除率)× 就労可能年数のライプニッツ係数

4. 介護が必要な重度後遺障害補償(限度額:最高4,000万円)

後遺障害の中でも、常時介護や随時介護が必要な場合に支払われる補償。

  • 常時介護の例

    • 意識が戻らない状態(植物状態)、寝たきりなど。
  • 随時介護の例

    • ある程度の日常生活は可能だが、定期的な介護が必要な場合。
  • 介護費用の補償

    • 施設利用費、介護ヘルパー費用などが認められる。

自賠責保険の補償の特徴

  1. 加害者に過失があっても、被害者の過失が大きくても一定額支払われる(過失相殺がない)

    • 被害者に重大な過失(70%以上)がある場合、支払額が2割減額されるが、最低限の補償は受けられる。
  2. 人身事故のみ対象(物損は補償されない)

    • 車両の修理代などは自賠責保険では補償されない。
  3. 補償限度額を超える場合は加害者側の任意保険で対応

    • 自賠責の上限を超えた分は、任意保険や示談交渉で対応する。

これらの補償を把握し、事故時には速やかに自賠責保険へ請求手続きを進めることが重要です。