交通事故で問われる法的責任
交通事故を起こした加害者には、法律上さまざまな責任が課せられます。これらの責任は、刑事責任、行政責任、民事責任の3つに大別されます。それぞれの責任について説明します。
1. 刑事責任
加害者が法律に違反して交通事故を起こした場合、刑法や道路交通法などに基づき、刑事罰を受けることがあります。
適用される主な罪状
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過失運転致死傷罪(刑法第211条の2)
- 過失によって他人を死傷させた場合に適用されます。
- 【罰則】7年以下の懲役または禁錮、または100万円以下の罰金。
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危険運転致死傷罪(刑法第208条の2)
- 飲酒運転や無免許運転、極端な速度超過など悪質な運転が原因で死傷事故を起こした場合に適用されます。
- 【罰則】致傷の場合:15年以下の懲役、致死の場合:1年以上20年以下の懲役。
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ひき逃げ(道路交通法第72条)
- 事故後に救護義務を怠った場合や、現場から逃走した場合に適用されます。
- 【罰則】10年以下の懲役または100万円以下の罰金。
その他の罰則
- 信号無視、スピード違反、飲酒運転など、道路交通法違反の罰則が併科される場合があります。
2. 行政責任
加害者には、運転免許の行政処分が科される場合があります。これは、交通事故を起こした場合に道路交通法に基づいて課されるものです。
主な処分
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免許の点数加算
- 事故の内容に応じて違反点数が加算され、累積点数により免許停止や取消となります。
- 例:死亡事故(35点以上)、重傷事故(13点以上)。
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免許停止または取消
- 重大事故の場合、免許が一定期間停止または取り消されます。
- 取消後、再取得には欠格期間(1~10年)が設定されます。
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講習受講命令
- 免許停止者には特定の講習受講が義務付けられることがあります。
3. 民事責任
交通事故の被害者に対して損害賠償を行う責任です。主に民法や自動車損害賠償保障法(自賠法)に基づきます。
損害賠償の対象
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治療費
被害者の医療費や入院費など。 -
逸失利益
事故により失われた将来の収入。 -
慰謝料
精神的苦痛に対する賠償。 -
物損
車両の修理費用、破損物の弁償費用。
保険を通じた賠償
- 自賠責保険:人身事故に対して最低限の補償を行う法定保険。
- 任意保険:自賠責保険で賄いきれない損害を補償。
責任の重複と具体例
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同時に複数の責任を負うケース
例えば、飲酒運転で死亡事故を起こした場合、加害者は刑事責任(危険運転致死罪)、行政責任(免許取消)、民事責任(損害賠償)を負うことになります。 -
責任を逃れることの難しさ
ひき逃げや虚偽の申告をしても、警察の捜査や証拠に基づき責任が追及されます。
まとめ
交通事故を起こした加害者は、被害者や社会に対して刑事、行政、民事の各責任を負います。これらの責任を適切に果たすことは、被害者の救済や社会的信頼の回復に繋がります。また、事故防止のために法令を遵守し、安全運転を心掛けることが最も重要です。