ひき逃げ(加害者不明の場合)
加害者不明(ひき逃げなど)の交通事故に遭った場合、国土交通省の「自動車損害賠償保障事業(政府補償事業)」に対して被害者が補償請求を行うことができます。以下に請求手順を詳しく説明します。
1. 請求の前提条件
国土交通省に請求するためには、以下の条件を満たしている必要があります:
- 加害者が不明(ひき逃げなど、警察が捜査しても特定できない)
- 被害者に重大な過失がない(被害者側に大きな過失があると補償が制限される)
- 自賠責保険に類する他の補償手段がない(人身傷害特約などがあれば、そちらを優先)
2. 請求手順
① 事故の届出(警察への報告)
まず、事故発生後速やかに警察へ通報し、事故証明書を取得することが必要です。
- 事故証明書は後の請求時に必須の書類となります。
- ひき逃げの場合、警察の捜査記録が請求時に求められることがあります。
② 書類の準備
以下の書類を準備します。
- 請求書(自賠責保険の支払い請求書と同じ様式)
- 交通事故証明書(警察署または自動車安全運転センターで取得)
- 診断書・治療費明細書(医療機関で発行されたもの)
- 休業損害証明書(仕事を休んだ場合、勤務先からの証明書)
- 後遺障害診断書(後遺症が残る場合)
- 被害者の身分証明書(運転免許証、健康保険証など)
- 振込先銀行口座情報(補償金の振込用)
③ 請求先の確認
請求書類は、被害者の居住地にある「自賠責保険の取扱い保険会社(損害保険会社)」を通じて提出します。
- 損保会社の窓口は国土交通省の代理機関として対応します。
- 直接国土交通省に提出するのではなく、保険会社が窓口となります。
④ 書類の提出と審査
書類を保険会社に提出すると、以下の手順で審査が行われます。
- 保険会社が内容を精査し、国土交通省(自動車事故対策機構)へ報告
- 必要に応じて追加の資料提出を求められることあり
- 審査の結果、補償が認められると支払い決定
審査期間: 通常3~6か月程度(複雑な場合はさらに長引く可能性あり)
⑤ 補償金の受け取り
審査が通過すれば、指定した銀行口座に補償金が振り込まれます。
補償内容の上限額(自賠責保険と同じ):
- 死亡補償:最大3,000万円
- 後遺障害補償:最大4,000万円(等級による)
- 傷害(治療費など):最大120万円
3. 重要なポイント・注意点
- 請求期限:
事故発生日から 3年以内(後遺障害の場合は症状固定から3年)に請求を行う必要があります。 - 損害賠償との関係:
その後加害者が判明した場合、政府補償事業で受けた補償金は加害者に請求できる金額から差し引かれます。 - 手続きのサポート:
保険会社の窓口のほか、弁護士や交通事故相談センターに相談することも可能です。
4. 請求手続きの流れまとめ
- 事故発生 → 警察へ通報、事故証明書を取得
- 書類の準備 → 診断書、交通事故証明書などを収集
- 保険会社窓口へ請求 → 必要書類を提出し審査を受ける
- 補償金の受領 → 審査通過後に口座へ振り込み
以上の流れに沿って手続きを進めることで、加害者不明の事故でも一定の補償を受けることができます。